『のりものマメ知識』 ちょっとユニークな車内サービスを-上田電鉄別所線

特急列車や新幹線に乗車していると、駅弁や飲みもの、お菓子などを載せたワゴンを押しながら車内販売が行われることがあります。列車内のサービスとしてはこの「車内販売」が最も一般的です。しかし、世の中には変わった車内サービスがあります。今回はちょっと風変わりな車内サービスを行う、上田電鉄をお送りします。

上田電鉄は、長野県に路線を有する鉄道事業者です。現在は別所(べっしょ)線の1路線のみとなっていますが、かつては上田周辺に多くの路線を保有していました。唯一残る別所線は、別所温泉駅~上田駅を結ぶ路線で、別所温泉を含む「信州の鎌倉」と呼ばれる沿線には、多くの観光地が存在します。


▲ 別所線の路線図。長野新幹線も通っているので、都心からも行きやすいですね。


別所線は1921年に上田温泉電軌が別所駅(現:別所温泉駅)と上田原駅間を開業したことに始まります。この頃の別所線は「軌道法」に定められた鉄道であり、法律上はいわゆる路面電車の扱いでした。1939年に鉄道に変更され、現在の名称である別所線に改名されます。そして同年夏には社名を「上田電鉄」に変更します。そしてその社名のまま現在に至り……ません。実はこの社名は「初代」上田電鉄であり、1943年に「上田丸子電鉄」、1969年には「上田交通」とさらに社名を変えます。そして2005年に上田交通の鉄道部門、すなわち別所線が上田電鉄に移管され、(今度こそ)現在に至ります。
 
上田交通時代の1986年まで、同線の架線電圧は比較的低い直流750ボルトでした(実際は1953年に600ボルトから少し昇圧され750ボルトとなっています)。当時は上田温泉電軌時代の電車や、2010年11月18日ののりものマメ知識文化財駅舎と特殊なスイッチバック-長野電鉄湯田中駅」で紹介した長野電鉄からの譲渡車などが走行していました。それら列車の中で特に「丸窓電車」という愛称で親しまれたモハ5250形は、レールファンにとっては興味深い列車ではないでしょうか?
レトロな車両がのんびりと走る路線であった別所線ですが、1986年に架線電圧を一般的な直流1500ボルトに昇圧。これにより設備の近代化がはかられ初代から活躍した電車などは役目を終えました。
実は同線は1973年に廃止の危機に直面していました。しかし地元住民らによる廃止反対運動や、別所線の利用促進運動などの結果、存続されることになりました。その際、設備の近代化などが進められ上記のような架線電圧の昇圧や車両の置き換えなどが実施されたのです。
 
さて、別所線新たに入ってきたのは大都会東京を走る東急電鉄の5000系でした。この電車、東急線では1986年までに全車が引退しましたが、上田交通(当時)を含め様々な地方私鉄へ譲渡され、現在でも活躍している仲間もいます。なお、上田交通(当時)に譲渡された5000系は1993年に運用を終え一部が廃車されましたが、トップナンバー、つまり最初に製造された1両だけが東急電鉄に戻り、東急時代の塗装に戻されました。そして現在は車体をカットされ短くはなったものの、渋谷駅のハチ公口に展示されています。
 
現在主に活躍している電車は、写真にも写っている1000系電車です。どこかで見たことあるような…は、正解。こちらも元・東急電鉄の電車です。上田電鉄は東急系列の鉄道事業者であり、以前から東急電鉄の車両を進んで使用しています。
 
別所線を走る電車内では、時折ある「粋なサービス」が始まることがあります。それは上田駅駅長さんによるハーモニカ演奏。団体のお客様向けに車内でハーモニカ演奏をしてお客様を盛り上げてくれます。駅長さんが制服のまま車内でハーモニカを演奏してくれるという、普通の車内サービスでは考えられないサプライズを見ることができます。
このサービスの発端となったのは2006年のこと。駅長さんと乗車していた観光客との会話が弾み、前日の宴会で使用してそのまま持ち合わせていたハーモニカで曲を演奏したことから始まります。以後この粋なサービスは話題になり、別所線の名物にもなりました。
ちなみに、演奏曲目は童謡や懐かしの邦楽など、乗客の皆さんも演奏に合わせて歌える曲目となっているようです。また、事前に歌詞カードが配られるなど準備はバッチリ(?)のようなので、皆さんで楽しめるイベントとなることは間違いないでしょう。


次回は京都と大阪を結ぶ私鉄をご紹介します。お楽しみに!

トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://ekispablog.jp/cmt/mt-tb.cgi/2819