
神奈川県の久里浜(くりはま)駅から東京駅を経て、東京湾をぐるりと取り囲み千葉県の千葉駅までを結ぶ、横須賀線・総武快速線。クリーム色と青色の独特の塗色を身にまとう電車が、今回の主役のE217系です。
E217系近郊用直流電車は、1994年に横須賀線・総武快速線向けに登場した電車です。同時期にJR東日本が製造した209系電車の構造を基本とし設計されました。
今となっては珍しくない「銀色のステンレス車体にラインカラーの帯をまとった」車体ですが、投入された当時の横須賀線・総武快速線は、先輩であるクリーム色と青色の113系が主流。この「横須賀線色」の中で輝いている存在でした。なお、鉄道ファンの間では「横須賀線色」を「スカ色」と呼ぶことが多いので、「のりものマメ知識」でも「スカ色」と呼ぶことにします。
E217系の大きな特徴はJRで初の「4ドア近郊用電車」であることです。まず、近郊用電車(近郊形電車)とは国鉄(日本国有鉄道)が定めた電車の用途による種類です。鎌倉などの観光地を沿線もつ横須賀線は、観光地へ向けて長旅をする乗客を運ぶ一方、都市近郊部より通勤・通学客を輸送する2つの側面を持ち合わせています。従って、ドアとドアの間は長旅に向くクロスシート、ドア付近は乗降をスムーズにするためロングシートとなっている113系を代表とした「セミクロスシート」構造が基本とされました。
長らくの間この近郊用電車の構造を取り入れた113系が使用されていましたが、時代が進むにつれ同系の構造はニーズにマッチしなくなっていきます。郊外の人口増加により通勤客が増加。「セミクロスシート」は座席数は多いものの立ち席が少なく、スムーズな乗降に支障をきたし始めました。もう一つ、ドアの数の問題もありました。113系は1車両に片側3箇所のドアが設置されている、いわゆる「3ドア」です。列車の場合、ドアの数と乗客の乗降時間は大きく関係があり、一般的にドア数が多いほど乗降時間は短く済みます。前述のような通勤・通学客増加のため3ドアの113系では大量の乗客の乗降に時間がかかってしまい、列車の遅延の原因となりました。
そこで新しく開発されたE217系は、当時としては思い切った構造が採用されレールファンの間では大きな話題となりました。その1つ目は「近郊用電車の4ドア化」です。大都市圏を走る通勤用電車と同じ4ドアとすることで、乗客の乗降時間短縮を狙いました。2つ目は「座席のロングシート化」。従来の113系はグリーン車を除くすべての車両がセミクロスシートでしたが、E217系では多くの車両の座席をロングシートとし、通勤電車と同様の座席となりました。
以後この「4ドアセミクロスシート+4ドアロングシート」構造は東海道本線や湘南新宿ラインで活躍するE231系、常磐線で活躍するE531系などにも受け継がれていきました。その意味合いではE217系は「新スタイル近郊用電車のパイオニア」とも言える存在でしょう。
なお、211系2000番台や313系2000番台などの電車は、「近郊用」にもかかわらず「オールロングシート」で、国鉄末期からJR化後以降では「近郊用電車」の定義は曖昧なものになっているようです。
さて、E217系は前述の横須賀線・総武快速線以外にも外房線、内房線、成田線など広範囲にわたって運用されています。同系は11両の「基本編成」と4両の「付属編成」の2種類があり、横須賀線・総武快速線の朝晩のラッシュ時を中心にこの2編成を連結させた15両で運転され、大都市圏の輸送に大いに貢献しています。昼間時間帯等の比較的乗客の少ない時間帯は、基本編成と付属編成が切り離され、4両の付属編成は横須賀線の逗子駅~久里浜駅、成田線の佐原駅~佐倉駅間などで運転されています。「基本編成」、「付属編成」の増結や切り離しは、ターミナル駅となる逗子駅や千葉駅で行われます。そのパターンは、
『「付属編成」が次の駅で前に停車中の「基本編成」と連結し出発』
『切り離されたそれぞれの編成が別方向列車として運用』
『15両で到着した列車の「基本編成」は折り返しで上り列車へ、「付属編成」はそのまま下り列車になる』
など、非常に複雑です。なお、これらの運用範囲・パターンはダイヤ改正ごとに変更されることが多く、以前は茨城県の鹿島神宮駅まで付属編成が乗り入れていた時期もありました。E217系の行動範囲は非常に広いですね。
今年で誕生から15年以上が経過したE217系ですが、2007年より機器更新工事が実施された編成が登場しました。インバータなどの走行関係を主に更新する工事ですが、外観塗色が従来の「スカ色」に比べて明るい色になり、見た目にも変化があります。「基本編成」と「付属編成」それぞれに行われており、運用によっては更新済み車両と未更新車両が連結されることもあります。見比べると塗色の違いは明らかです。

▲ 機器更新工事後、新「スカ色」となったE217系11両編成
※ヴァル研究所社員撮影
「スカ色」の伝統を守りつつも、時代の変化に柔軟に対応したE217系近郊用電車。今日も都心と三浦半島、房総半島を駆け巡ります。

次回はJR東海の秘境路線と言われる飯田線をお送りします。お楽しみに。