
駅弁「ごきげんべんとう」に入っている2本の日本酒は、いずれも松江にある國暉(こっき)酒造さんのもの。「奥出雲の酒造好適米を磨きに磨き、出雲杜氏伝承の技法で丹念に醸しあげた芳醇な地酒です」と駅弁の包装紙に書かれています。そう、日本酒といえば東北や北陸などを連想しがちですが、じつは「出雲」も、日本酒と深~い関わりがある地なんです!
出雲といえば、日本神話の故郷的な存在。8つの頭と尾を持つ大蛇「ヤマタノオロチ」を素盞鳴尊(スサノオノミコト)が退治したのも出雲の国。このとき、スサノオはオロチを倒すために用いたのが「八塩折酒(やしおりのさけ)」。8つの頭が次々にこの酒を飲んで酔っ払ったところをバサリと剣で退治しました。オロチの身になって言うならば、酒は飲んでも飲まれるな、ですね。
さて、出雲には皆さんご存知の出雲大社があります。現在、日本において無免許でお米からお酒を造ることは禁じられていますが、出雲大社は一定量において酒造を許可されているんです。元来、お酒は庶民の嗜好品ではなく、神々に捧げるためのもの。そんな習わしから、かつては神社や寺院で酒造りが頻繁に行なわれていました。
そして、出雲には出雲大社のほかに、もうひとつ酒造免許を持っている神社があります。それが佐香神社(別名:松尾大社)です。
京都にある松尾大社の祭神は“酒の神”としても知られる大山咋命(おおやまくいのかみ)。こちらの佐香神社にも大山咋命は祀られています。しかも、その他の祭神も久斯神(くすのかみ)、瓊々杵尊(ににぎのみこと)、木花咲耶比売命(このはなさくやひめ)など、今すぐ酒盛りが始まりそうなくらい“酒の神”のオンパレード。そのため酒造業者からの信仰も厚く、例年10月13日に行なわれる例大祭、俗にいわれる「濁酒祭(どぶろくまつり)」では全国各地から酒造業者が祈願に訪れます。

では一体なぜ、佐香神社は酒とのゆかりが深いのか?それもまた、神話によるものです。「出雲風土記」によると、佐香の地に神々が集い、酒蔵を建てて酒を造って宴会をした、という記述があります。神話の世界を含めるのなら、ここが日本酒発祥の地といえるでしょう。
しかも「佐香(さか)」が「酒(さけ)」に転じたという説もあるほどです。現在、佐香神社のある場所の地名は「小堺(こさかい)」。「さか」が残ってますよね。お酒と出雲のゆかりの深さ、ここにありといった感じです。皆さんぜひとも、神話に想いを馳せながら出雲の神社を巡り、「ごきげんべんとう」を食べつつ山陰の鉄道旅行を満喫してみてください。