
鉄道関係の博物館といえば、2007年10月に開館したさいたま市の鉄道博物館を思い浮かべる人も多いでしょう。もちろん、これ以外にも全国各地にあり、九州ではJR九州のバックアップを受けて2003年8月に北九州市が開設した九州鉄道記念館が代表格です。
同記念館は、北九州市を代表する観光地として知られる門司港レトロ地区の観光施設の一つとして開設されました。貿易を中心に栄えた明治・大正時代の面影が残る街並みを観光資源とした同地区に、明治時代に建設されたレンガ造りの旧九州鉄道本社ビルを改装した記念館本館はぴったりで、この建物自体も貴重な文化遺産の展示物といえます。この本館に隣接したミニ鉄道公園にあるミニ列車は、見学者自身で運転する展示物で、鉄道博物館のミニ運転列車を先取りしたものとして、同記念館ご自慢の展示品です。
鉄道関係の博物館で、気になるのは保存車両です。同記念館では、JR九州が将来の展示用に保管していた車両や北九州市内の公園などで展示していた保存車両をJR九州小倉工場で整備してから搬入しました。駅のホームを模した車両展示場では、蒸気機関車・電気機関車・電車を各2両、ディーゼルカーと貨車を各1両展示しています。全国的に見ても貨車の保存例は珍しいのですが、炭田の石炭輸送で鉄道が発展した九州らしく石炭車が保存されているのです。さらに本館内には、九州鉄道の設計のまま国有化後の1909年に製造され、耶馬溪鉄道に払い下げられる1971年まで使われた客車が展示されています。
ところで、上述の保存車両で筆者が一番注目した車両は、この写真のキハ07形41号です。この形式は、戦前に製造されたガソリンカーの生き残りで、戦後になり製造時に装備されていたガソリンエンジンをディーゼルエンジンに交換した車両です。戦前生まれの内燃動車(ガソリンカーやディーゼルカーなど)では最大の生産両数を誇り、戦後には最初からディーゼルエンジンを装備して新製した車両が加わり、さらに同設計の新車をメーカーに発注した私鉄もありました。また、国鉄で新形ディーゼルカーが登場した後、一部は私鉄に払い下げられ、近代化に貢献しました。
誕生当時の内燃動車はマニュアルミッションの自動車と同様に、ペダルでクラッチを切って手動でギアをチェンジする方式で、機械式と呼ばれました。このキハ07形41号は、今は廃線となった宮原線(久大本線恵良で分岐する支線)で使われた国鉄最後の機械式ディーゼルカーの1両です。最後の機械式という価値が認められてか、1969年に廃車となった後も解体されることはなく、豊後森機関区や大分運転所で保管されていました。私鉄に払い下げられた同形車でも2両が保存されていますが、そのどちらも液体式(車でいうオートマチック)に改造されており、もっとも原形に近いのがこの車両なのです。
このように、国内の内燃動車発達史において、欠くことができない車両です。また、筆者個人としては、保管されている事を知らずに偶然見かけた1980年夏の九州旅行以来、気になっていた車両でもあります。
写真を見ると、ホームから渡リ板がかけてあるのが判ります。車内に立ち入る事ができる状態で保存されているわけで、現役時代の雰囲気を味わうことができます。しかも、保存されている場所は、門司港駅構内と低いフェンスで仕切られているだけですので、車両に乗り込んで外を見ていると、今でも現役のような錯覚を覚えます。
この門司港では、今春4月26日から旧貨物線を利用してレトロ観光列車を運転する準備を進めています。ますます、魅力が高まりそうな門司港レトロ地区です。