琵琶湖の東に位置する滋賀県草津市。かつて滋賀一帯は「近江」と呼ばれていました。これは浜名湖一帯を「遠江」と呼んだことに対をなす意味で、もともとの「近淡海(ちかつあわうみ)」から転じて「近江」になったといわれています。「(近)淡海」とは、淡水湖である琵琶湖の古い呼称。駅弁「淡海のてんびん弁当」は、琵琶湖のてんびん弁当でもあるわけです。
では、「てんびん」の由来は何か?これは、かつて全国で活躍した「近江商人」のシンボルです。近江、とりわけ草津は東海道と中山道の合流点でもあり、いわゆる宿場町でした。交通の要となった近江の商人達は、この町での商いにとどまらず、天秤棒を担いで全国を行脚しました。近江の産物を他の地域で売り、帰りは地域の産物を近江に持ち帰って売る。そして今では一般的な「支店」の考えも導入し、全国にネットワークを築いて富を得ました。丸紅や伊藤忠、デパートの高島屋など、近江商人を源流に持つ企業はじつにたくさんあります。
「近江の千両天秤」ということわざがありますが、これは「たとえ千両という富を築いた場合でも、天秤を担いで行商せよ」という意味合いです。現状に満足するなという心に、「初心忘るべからず」の精神がミックスされたような言葉ですよね。
このような経営哲学を、近江商人達は常日頃から意識していました。その哲学は現在でも通じるものばかり。近江商人に学べ!といった主旨のビジネス書も多く出版されています。
彼らの哲学を現した、代表的なフレーズが「三方良し」。この「三方」とは「売り手」と「買い手」、そして「世間」です。商売とは、これらすべてを満足させるものでなくてはならないという考えでした。売り手と買い手までは分かりますが、江戸時代に「世間を満足させよ」という考えはかなり先進的。今でいうところの「地域貢献」に近いと思います。
駅弁「淡海のてんびん弁当」には、「近江商人の知恵袋」と題したおみくじ状の紙が入っています。「三方良し」の他、「商人の五つの心得」「商人の五つの戒め」「商人の五つの勤め」といった五箇条が記されていました。その内容は、実際に近江界隈を訪れた際に駅弁を買って確かめてくださいね。
出張先での食事はなかなか時間がままならず、駅弁で済ませているという方もいらっしゃるはず。「淡海のてんびん弁当」は、そんな方にぜひ食べていただきたいお弁当です。