夜桜と ともに儚き 朧月 -春のお月見のススメ-

月見「暑さ寒さも彼岸まで」と言います。ちょうど昨日が「彼岸明け」でしたので、これから次第に暖かさが増してくることでしょう。今回の後日探訪は、この「彼岸」にも少し関わるお話です。

秋の彼岸の頃といえば、お月見のシーズンです。昨年9月の「駅すぱあとアンテナ」では「中秋の名月に出逢う旅」特集を組みました。その頃によく食べられるものに「おはぎ」がありますが、これは秋の七草のひとつ「萩」に由来します。一方、春の彼岸は「ぼたもち」。これは「牡丹」からきています。そして春の彼岸の時期も、月が風情を増すとして、いにしえの歌人達は月見を楽しみ、歌を詠みました。そこで今回は、春のお月見をおすすめしたいと思います。

天候にもよりますが、秋の月がくっきりとしているのに比べ、春の月はぼんやりと靄(もや)がかかったように見えることがあります。これがいわゆる「朧月(おぼろづき)」です。与謝蕪村は「朧月 大河をのぼる 御舟かな」と詠み、松尾芭蕉は「猫の恋 やむとき閨の 朧月」と詠みました。芭蕉の句は猫のさかりの声と朧月、双方が春の夜をよく現していますよね。明治の俳人、高浜虚子の句は「犬吠の 今宵の朧 待つとせん」。犬吠とは、銚子の犬吠埼のこと。日の出の名所として有名ですが、海の上にぷかりと浮かぶ犬吠埼の月も格別ですよ!

そして、私達日本人の心に染み渡る名曲「荒城の月」。この歌は「春高樓(こうろう)の花の宴 めぐる盃かげさして」と始まります。ちなみに二番は「秋陣営の霜の色 鳴き行く雁の数見せて」と始まるので、歌そのものが「春の歌」というわけではありませんが、ぼんやりと霞む春の月と城の姿、なんともよく似合いますよね。では、この「荒城」とは一体どのことなのか?この歌の作詞者、土井晩翠は仙台の青葉城(現在は仙台城跡)と、会津若松の鶴ヶ城でイメージを膨らませたといわれています。一方、作曲者は滝廉太郎。彼の育った大分県竹田には、かつて堅城として名を馳せた「岡城(現在は岡城跡)」がありましたので、ここをイメージしたのではないかと言われています。よってこの3つのお城いずれにも、歌碑が建っています。ちなみに仙台城跡(青葉山公園)、鶴ヶ城(鶴ヶ城公園)、岡城跡は桜の名所としても有名です。鶴ヶ城ではライトアップも行なわれますので、ぜひ春の闇に浮かぶ城と桜、そして月を鑑賞してみてはいかがでしょう。

月見もちろん、信州の姥捨高知の桂浜、月の名所といわれる地は他にもたくさんあります。以前「駅すぱあとアンテナ」に月見の名所として掲載した横浜・三渓園では3月29日~4月7日にかけて「観桜の夕べ」が催され、夜の21時まで園内で春の宵を楽しむことができます。ちょうどその期間は、半月から三日月を経て、新月になる頃合いです。

ぜひ皆さん春の月に注目して、雅なひとときを過ごしてみてください!


駅すぱ「特集」後日探訪:2007年9月号の特集『古き良きニッポン「中秋の名月に出逢う旅」』より

トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://ekispablog.jp/cmt/mt-tb.cgi/1532