
JR東日本の五能線五所川原駅に隣接して、津軽鉄道の起点である津軽五所川原駅があります。同線は太宰治や吉幾三の出身地として知られる旧金木町(現・五所川原市)を経て、北津軽郡中泊町の津軽中里駅を結ぶローカル私鉄です。ここを走る鈴虫列車やストーブ列車など、季節色が強いイベント列車は、テレビや週刊誌などのマスコミで取り上げられることも多く、ご存知の方も多いでしょう。
それでは、なぜストーブ付きの列車が走っているのでしょうか。
蒸気機関車時代の鉄道では、動力源である蒸気を機関車からパイプで客車に送り、それを暖房に使うことが一般的でした。しかし、ローカル線でしばしば見られた、1本の列車に貨車と客車の両方を連結する混合列車と呼ばれる列車では、貨車に蒸気を通すパイプが無いために、蒸気を暖房に使うことが出来ない事がありました。また、蒸気機関車でも貨物専用に設計された形や小型の機関車では、暖房用に蒸気を送る設備を持たない機関車もありました。このような場合、暖房用にストーブを積んだ客車を使うことがあったのです。
さらに蒸気機関車をディーゼル化した場合、国鉄の比較的大型の機関車では、暖房用に蒸気発生装置を搭載しましたが、私鉄では客車に自前の暖房設備を積み、機関車には暖房用の設備を持たせないケースが多くありました。この頃の非電化私鉄では、旅客列車には床下にエンジンを積んだディーゼルカーが主力となっており、機関車で引っ張る客車列車は廃止となっているか、走っていてもラッシュ時などの補助的な存在であることが多かったのです。なお、自前の暖房と言っても、ストーブとは限らず床下に石油を燃料とした暖房装置を取り付ける例もありました。
国鉄や他の私鉄でストーブを暖房設備とする客車が消えていく中、津軽鉄道ではラッシュ時に対応するためにストーブ付きの客車を使う列車が残っていました。これが次第に、日本で最後のストーブ列車として有名になり、利用者の減少でラッシュ時に客車列車の必要がなくなった後は、イベント列車として昼間に走るようになり、今に至っています。
津軽鉄道の経営は、けっして楽な状況ではありませんので、運行や維持の経費が高いストーブ列車は、集客力があるとはいえ、その維持に苦労があるのも確かです。このため、この冬からストーブ列車料金を新設して、維持経費の一部に当てることになりました。料金は大人子供共に300円で、列車のイラスト入りのきっぷですので、乗車記念にもなります。きっぷの裏面には、申し出れば記念に持ち帰ることができると明記されています。
ストーブ列車は、冬以外には同じ時刻で通常の列車が走っていますので、ストーブが目当てで無い地元のお客さんからストーブ列車料金を取るわけにはいきません。そのため、写真のように編成の五所川原寄りには、通常のディーゼルカーが連結されています。この車両に乗車すれば、料金は不要です。一方、津軽中里寄りの車両は、団体専用になっています。ストーブ列車は冬の青森観光の目玉の一つですから、ツアーに組み込まれ、団体で乗車する人も多いのです。この写真の列車でも、大型バス1台のツアー客が乗車していました。
この冬のストーブ列車は、3月31日まで1日2往復走ります。昔懐かしい、客車を使った、本物の昭和の列車の体験はいかがですか?