子どもの頃、よくJR中央線を利用していました。いつも眼にするのは中央線や総武線。その中で時折、風のように通過する特急「あずさ」に興奮していました。高尾より西は未知の世界だったので、この電車はどこまで行くんだろう?そんな疑問を「あずさ」を見るたびに感じていたと思います。今回は「中央線(中央本線)」がテーマの駅弁「新宿弁當」です。
「新宿」と銘打ってあるものの、八王子駅や甲府駅などでも販売しています。現在、東京駅から新宿、塩尻を経由して名古屋駅までを結ぶ中央線ですが、この駅弁が登場した2003年は、甲府駅まで延長された明治36年から数えてちょうど100周年。その記念として生まれました。よって、新宿の名物・名産ではなく中央線沿線の味覚をイメージして作られた駅弁です。
パッケージには「中央線限定」とあります。描かれているのは、山武羅誠祐が描いた鳥瞰図。明治時代に新宿から高尾方面を見た風景です。当時、鳥瞰図はいわば旅行パンフレットの役割を果たしていましたので、小金井桜や玉川などの名所を記した画は、駅弁の掛け紙として理に叶っていますね。趣きがあります。
封を開けるとおかずが満載。「中央線幕の内」といった印象です。ではさっそく、おかずひとつひとつを吟味していきましょう。
「とろさくら肉の旨煮」。これは武田信玄の騎馬隊など「馬」とのゆかりが深い甲州の一品です。馬肉独特の甘味の強さで満足度は抜群。「トロ」と銘打つだけあって、舌触りのよい脂肪の旨味が味わえます。にもかかわらずヘルシーなのが馬肉のいいところですね。
「鮭の信州焼」。これも武田信玄が戦を乗り切るため、保存の利く味噌作りを奨励したことに由来します。伊達政宗のお膝元の仙台味噌といい「名将あるところ名味噌あり」ですね。信州味噌をあしらって焼いた鮭、なんとも濃厚でご飯が進む進む!尖っていない、丸みのある味噌の風味に思わず顔がほころびます。中央線が通過する諏訪市をはじめ、長野は屈指の味噌どころ。「マルコメみそ」のマルコメは長野市、タケヤみその竹屋は諏訪市、ハナマルキは上伊那郡辰野町にそれぞれ本社があります。
「芋の煮っころがし」。一見、全国どこでも見受けられる家庭料理ですが、中央線竜王駅のある甲斐市(旧・竜王町界隈)は200年以上の歴史を持つサトイモ(八幡芋)の名産地。野趣がありつつどこか上品な、もっちりとした食感が魅力です。この地方では「お月見」の際に、その秋の収穫物として芋の煮っころがしをお供えする風習があり、十五夜のことを「芋名月(いもめいげつ)」と呼んだりします。なにげない一品でも、それぞれ名産や「ゆかり」があるものですね。
さて、まだまだおかずはたくさんあります!腹も三分目といったところでしょうか。続きは次回お送りいたします。