漁師や大工の飯と、釣りブームに沸いた江戸の町 深川めし【後編】

深川めし今でこそ埋め立てによって海はなくなったものの、かつては漁師の町として栄えてきた東京・深川。その地で漁師の人たちの胃袋を満たしていたのが深川めしです。昔はアサリやねぎなどを煮込んだ味噌汁を、ご飯にぶっかけたものを深川めし(深川丼)と呼んでいたといいます。安い、早い、美味しいの三拍子揃っていたわけですね。

その一方で、材木の町でもあった深川の大工達が、昼飯としてアサリを炊き込んだご飯を食べていて、これも昨今では深川めしと呼ばれています。「漁師版」「大工版」の二種類がある、といったところでしょうか。そうなると(日本レストランエンタプライズの)駅弁は、いわば「大工版深川めし」ですね。

その駅弁に乗るハゼとアナゴも江戸の頃、東京湾でたくさん獲れたといいます。今でも東京湾の釣りといえばハゼですよね。そして江戸といえば、天下泰平の徳川の時代。この頃にはさまざまな町民文化、とりわけ「レジャー」が芽吹きました。花見や旅行(お伊勢参り)が盛んになったのもこの頃からです。そのひとつが「釣り」でした。

かつては埋立地も今ほどではなく、隅田川には「中洲」もありました。湾内は波も穏やか。魚にとっても住み良い環境だったため、「第一次」といえる釣りブームが江戸の町民の間で起こったといいます。中でもハゼは岸からでも比較的簡単に釣ることができ、乾燥させて正月のお雑煮のダシにも愛用されていました。もちろんこの頃から「甘露煮」にもなっていたそうです。

深川めしちょっと話がそれますが、江戸っ子の雑煮もまた、サッパリとシンプルな一品です。入れるものは餅と小松菜、かまぼこなど。お節は豪華にするが、その後はサッパリでいいや、という気性から生まれたものかもしれません。駅弁「深川めし」にも相通じるものがありますね。サッパリとしていて量もそれほど多くないので、「朝ご飯」として食べてもいいですし、ヘルシーなので女性にも受けそう。あくまでも想像ですが「駅弁は移動中のメシ。飾ったモンは夜にしっかり食えってンだ。それ以外のメシはサッパリでいいやな!」という江戸っ子のセリフが聞こえてきそうです。

そしてアナゴもまた、東京湾で豊富に獲れた魚の一種。瀬戸内海や伊勢湾も名産地で、全国にはあなごにフォーカスした駅弁が複数あります。かつて当コーナーでもJR高松駅の駅弁「あなごめし」を紹介しましたが、やはりトコロ変われば品変わるといいますか、深川めしのあなご蒲焼とは異なる美味しさでした。以前、関西に行って刺身を食べていると「東京の人はやわっこい(柔らかい)魚が好きだねぇ」と言われたことがあります。たしかにその通りかもしれません。調理されたアナゴもまた、関東のほうが柔らかく感じます。

また、アナゴは「ウナギの二番煎じ」といったような負のイメージが持たれがちでしたが、低脂肪、低カロリーでビタミンAやEも豊富ということで、昨今ひそかに注目を浴びている魚といえるでしょう。

ヘルシーでサッパリ、なんとも「粋」な駅弁「深川めし」。ぜひ一度ご賞味ください。


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