日本人は大の「マグロ好き」。なにしろ世界の漁獲高のおよそ3分の1の量が、日本人の胃袋に収まっているんです。国内産だけでは足りず、2004年には54カ国からマグロを輸入しているほどです。当然ながら輸入マグロは、主に冷凍された状態で日本にやってきます。国内産であっても遠洋漁業などにより、半分以上が冷凍です。そのため近海で獲れ、冷凍せずに市場に上がる「生鮮」マグロは貴重品。そこで台頭してきたのが「大間のマグロ」でした。
本マグロは水温が上昇すると、冷たい水温を求めて泳ぐ性質があります。本州に沿って北上し、たどり着くのは津軽海峡です。なかでも本州最北端の大間崎から沖合600mにある弁天島は、格好の「漁礁」。日本海と太平洋の海流がぶつかる海域はプランクトンが豊富で、それを食べる小魚が集まり、さらに小魚を食べるイカなどが集まって、最終的にマグロが集まってくる、という寸法です。
「生鮮」であることに加え、「一本釣り」という漁法も、マグロの値段を高くする一因なんです。網で獲るよりも一本釣りのほうが身体が傷つかず、釣り上げたマグロはそれこそ100万円単位の値がつきます。何日も、何ヶ月も釣れなかったとしても、一本釣り上げれば大逆転!マグロ漁師の中には自らの仕事を「バクチ」だとみなす人もいるほどです。
そんな大間のマグロを一気に有名にしたのは、2001年1月5日のこと。この日は年初めの「初競り」で、1kg10万円、1本2,020万円という高値がつきました!うーむすごい。「一戸建ての家」が泳いでいるようなものです。しかし一体このマグロ、誰が食べたんでしょうか・・・。
そんな大間の町ですが、現在鉄道は敷かれていません。「大間のマグロづけ炙り丼」を販売している八戸駅からJR快速しもきた(大湊行)に乗り、約1時間半で本州最北端の駅、下北駅に着きます。さらにここから下北交通のバスに乗り、約1時間半で大間に到着。ちなみに北海道函館市からは東日本フェリーで約1時間40分かかります。容易にアクセスしにくいところではありますが、昨今の大間のマグロ人気により、この地を訪れる人も増えています。例年10月中旬には「大間超マグロ祭り」が開かれ、マグロの解体ショーや即売会、海鮮バーベキュー、マグロ漁ウォッチなどで賑わいます。
大間の地には、かつて鉄道が敷かれる計画がありました。その名もズバリ、大間鉄道。下北駅から大間までを結ぶ路線です。時は戦時下、青函連絡船が空襲被害に遭うと北海道と本州が寸断され、北方の海軍要塞に物資が届かずに孤立してしまう。それを避けるため、津軽海峡の中で最も幅の狭い大間と北海道・戸井にルートを確保しておきたい。それには大間への物資供給路として鉄道が必要だ、ということから着工が始まりました。
工事は着々と進むも、戦火が激しくなった昭和18年、資材不足によって工事は中断。結局鉄道は完成しませんでしたが、鉄道ファンの間では「幻の大間鉄道」として知られることになりました。線路が通る予定だったアーチ橋や駅舎、トンネルの名残など、今でもそこかしこにコンクリートの「遺産」がのこっています。
マグロで栄える本州最北端の町、大間。八戸駅の駅弁「大間のマグロづけ炙り丼」でその味を堪能することはできますが、さらに北へ北へ向かって、「本場の味」をご当地で味わってみたいところです。